朝顔 ヘブンリーブルーのお話
神秘的なブルーの朝顔が咲きました。ヘブンリーブルー(天上の青)という種類です。
その美しい朝顔の一生を通して、見た事、感じた事、そして感じてほしいことをおはなしにしました。
「あさがお」ヘブンリーブルーの物語
春のあたたかい日、その命は柔らかい土の中で目を覚しました。
黒くてかたい殻に包まれていた命は、根がのびて、次に大きく頭を持ち上げて大きく大きくふくらんでいきました。
「もう起きていいよ」と、黒いありんこが通り過ぎて行きました。
ミミズのニョロニョロが「そろそろだよ」と、春が来た事を教えてくれました。
重いあたまをよいしょと持ち上げ、あたたかいふとんの中から顔を半分出して外の世界を見まわしました。
空はとっても青くて、どこまでも透通っていました。
お日様の光がまぶしくて驚きましたが、その光は暖かく、そよ風がほほをなでていきました。
ゆっくり、ゆっくりのびをして、ふんわりふとんを持ち上げて、黒茶色のコートを脱ぎ捨てると、ふしぎふしぎ可愛らしいハートの葉っぱが二枚顔を出しました。
「はじめまして」双葉のフリルの誕生でした。
フリルは思いっきりのびをしてちぢんでいた葉の先をいっぱいに広げて、あたりを見回しました。
この世界には光があり、風があり、そして色がありました。
赤い チューリップ
青い わすれなぐさ
黄色い なのはな
紫の すみれ
他にもたくさんのお花と生き物がいます。
見るものすべて、新しくて感動でした。
しばらくそよ風に揺られていると、ある日あおむしのピートがよじ上ってフリルの上でもぞも動きました。
生まれたてのあおむし君です。
「あはは、くすぐったい!」
双葉のフリルが肩をすぼめたとたん、ビートは葉っぱから落ちそうになりました。
「しっかりつかまって」フリルが叫ぶと、ビートは沢山のうしろ足で葉っぱの裏側にぴたりとくっつきました。
またまたくすぐったかったけど、今度はじっと我慢しました。
はじめての大事な友だちを、ふり落としたくなかったからです。
(でも、今は食べないでね。お願い…)心の中で思いました。
フリルの双葉の間からは、丁度新しい本葉のあかちゃんが顔を出していたからです。
ビートはフリルが大切に大切にあかちゃんを育ようとしていることを知り
「わかった、またね」そう言って帰っていきました。
それから何度かビートはフリルに会いに来ました。 だんだんぷくぷくと大きくなるビートを見るのは、凄く楽しみでした。
フリルも本葉の緑の葉っぱがゆさゆさと風に揺れて、立派になっていました。
大きくなったたくさんの本葉をビートにも食べてもらうことにしました。
「ありがとう」おいしそうにみどりのごちそうを食べて、帰っていきました。
そして、何日か過ぎるとビートはあおむしからさなぎになり、じっと動かなくなりました。「もういいよ」と、空から声が聞こえて、くねくね、モゾモゾ、よろいの様な衣装を脱いで、縮んでいた羽をぐいーんと伸ばし広げました。
そう。ビートは見事に変身して白い羽に黒い点があるモンシロチョウになりました。
羽を何度も閉じたり開いたり、そしてそよ風が吹いて、一瞬ふわっと体を浮かせたかと思と、大空にふんわりひらひらと飛び立ちました。「またね」
フリルはその様子を見上げながらさびしい気持ちと、空を自由に飛べるようになったピートを応援したい気持ちが、行ったり来たり。
「またね」と言ってビートが飛び立った方向を、いつまでもいつまでも見つめていました。
そして、暑い夏がやって来てフリルにも変化があらわれました。
蔓をどんどんのばして、その先にお花の赤ちゃんが見えてきました。
それは、まだ小さな小さなつぼみですが、フリルに大きな楽しみが出来ました。
お日様がキラキラと輝く朝早く、綺麗な花が咲きました。青い花びらを薄く広げてほこらしげに。
フリルはとっても嬉しくて、ずっと上ばかり見ていました。
お日さまの光が花びらに当たると、青が青空に重なってきれいな青紫のブルーになりました。
「天上のブルー」という名のついたその朝顔は、みんなの人気者です。
ありんこもミミズのニョロニョロも、そして飛び立ったビートもどこからかお花が咲いたお祝いに来てくれました。
「凄いね、きれいだね。よかったね」と、お友達を連れてきました。
ミツバチのピーコやモンシロチョウの仲間たちです。
お花は毎日絶えることなく咲き、花壇に遊びに来る虫や鳥、人々の心にも大きな夢を咲かせてとても賑やかでした。
日照りや雨、大粒の夕立、風の強い日、いろんな日ががありましたが、それでも青い朝顔の花は咲き続けました。
ハチのピークは忙しく、みつを集めに朝と晩にやってきます。
ありんこも甘い蜜を花粉と一緒に運び出して、一日中忙しそうです。
フリルは、みんなの役に立てることもうれしくて、毎日が幸せでした。
夏が終わり秋になると、フリルや本葉・つぼみにまた新たな変化がありました。
少しずつ緑の葉っぱは黄緑になって、フリルの双葉も黄色っぽくなりました。
あんなに沢山咲いていたお花も、少しづつ減って、小さくなって、花の色も薄くなりました。
風も冷たくなってきて朝晩は冷え込んでくると、本葉の葉っぱもフリルも、みんなで体を寄せ合ってこれからどうなるんだろう?と、心細くなってきました。
すると、ありんこやミツバチのピーコがそんなフリルの気持ちを察したのか、上まで行ってフリルの子供たちがどんなふうになっているのか見に行ってくれました。
もうずいぶん高いところに子供たちは行ってしまったので、フリルからはしっかり見ることが出来ません。
ありんこが戻ってきました。
「すごいよ、すごいよ、しぼんだ花の後に緑のまあるいふくらみがあるよ。」
ミツバチのピーコも戻ってきました
「上の方にはまだ少しつぼみがあって、毎日は無理かもしれないけどまだ咲くよ」
そして、あのチョウチョになったビートも、戻ってきました
「久しぶり~ お空を飛ぶのは楽しい?」フリルは声を掛けました。
「うんうん、フリルの花も、お空に近いところで頑張っているよ。」
ビートは息を弾ませて、いろいろこれまで世の中で見てきたことを話してくれました。
少し先の花だんには背の高いひまわりが咲いていて、黄色い花が終わったけど種の子供たちがいっぱいできていること。
ひまわりの双葉さんも、だんだん黄色くなっていること。
秋の花のコスモスがとってもきれいに咲き始めていること。
キンモクセイの花も一斉に咲いて、町中とっても甘くていい香りになっていること。
聞いているだけでとっても楽しくなりました。
そして、冬という季節になると、大体の葉っぱは衣替えをするということもわかりました。
黄緑だった葉っぱが薄茶色に変わり、ふんわり柔らかくなるということ。そして、いつか旅立っていくということ。
まわりのお花がみな旅立ってしまったのに、ヘブンリーブルーの朝顔は、それはそれは長いこと、クリスマスの頃まで花が咲き、みんなを驚かせました。
そしてとうとう最後の花を咲かせると、フリルの葉っぱは薄茶色のしわしわになってペラペラになり、それでもつるにしがみついて必死に風に吹かれていました。
フリルもみんなと同じ、からだは黄色から薄茶色になって、しわしわで、よれよれで、ペラペラです。
(もう、何の、役にも立たないんだ…)心の中で悲しい気持ちがあふれてきました。
みんないなくなって、これから、どうなるのかも不安で、なみだがこぼれそうになった時、
コツン、パラパラ コツンコツン・・・
何かが空からふってきました。黒茶色のかたいものがフリルのしわしわの葉っぱに当たり、地面におちました。
「イタタ」小さな小さな黒いものが口々に騒いでいます。
フリルがそっと覗くと、フリルのすぐ下にもおしりをさすっている子がいます。
誰?今ごろ、・・・あっ・・・・
春、フリルが生まれる前のこと、ぼんやりと思い出しました。
(あたらしい命の種)まだ役目は終わってない。
こぼれた種の上に、本葉たちがお布団のように舞い降りて行ってふんわり重なりました。
「あったかいね、たすかった…」と小さな種たちが喜ぶ声がします。
フリルもふんわり、やさしく地面に舞いおりてかわいい子たちを守ってあげたいと思いました。
双葉のフリルは種の子供たちを驚かせないようにと、静かに、静かに土に降りました。
春の初め、暖かいふとんのようなもの守られていたのは、こんなやさしい魔法だったのか、と心が熱くなりました。
ミミズのニョロニョロがそっと通り過ぎながら「がんばったね。ゆっくりおやすみなさい」と声をかけてくれました。
春になったら「子供たちを、起こしてね」フリルは心の中でそうつぶやいて、とっても眠くなって静かに目を閉じました。
気が付くとフリルの上にも、何枚か葉っぱがふってきてあったかい気持ちになり幸せでした。
みんな、ありがとう
それから雨の日も、雪の日もみんないっしょに同じ夢を見ていました。
種を守って命をつないで、元気なヘブンリーブルーの花をいっぱい咲かせる、という夢。
ながーい、ながーい冬の後、春を知らせる
「そろそろだよ・・・」の声を待ちながら。
おしまい
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